インターネット上の掲示板やSNSでは、「初対面の飲み会で借りてきた猫になってしまい自己嫌悪に陥った」「職場でうまく馴染めず借りてきた猫状態から脱却できない」といった悩みの声が散見されます。現代の社会生活では「常に社交的で堂々と振る舞えること」が過度に称賛される傾向にあり、静止してしまう反応が「コミュニケーション能力の欠如」と短絡的に結びつけられがちです。
しかし、これは生物学的・心理学的な観点から見れば完全な誤解です。見慣れない環境で直ちに自己主張せず、まず身を潜めて周囲を観察する行動は、進化心理学的には「危険な地雷を踏まないための極めて高度な生存知能」に他なりません。特に感受性が高く周囲の空気感を細やかに察知するHSP(Highly Sensitive Person)気質の人ほど、情報量の多さに圧倒されて一時的な「フリーズ状態」に入りやすい傾向があります。
無謀に飛び出して不用意な発言を繰り返す人物よりも、最初は静かに観察してグループ内の力学や文化を把握してから動き出す人物の方が、長期的な組織適応力や信頼関係の構築において遥かに高い成果を上げるケースも少なくありません。「借りてきた猫」の状態は欠点ではなく、脳が新しい環境のデータを丹念にスキャンしている準備期間と捉え直す視点が重要です。