中村ゆりの凛とした佇まいと深みのある表現力の背景には、自らのルーツと真摯に向き合ってきた生い立ちの歴史があります。彼女は父親が在日韓国人3世、母親が韓国生まれであり、自身も韓国籍であることを公表しています。本名は「成友理(ソン・ウリ)」です。
大阪府寝屋川市で生まれ育った彼女は、文化的なアイデンティティに対して過度に隠すことも誇張することもなく、極めて誠実な姿勢を貫いてきました。その覚悟が世に示されたのが、2007年公開の井筒和幸監督作品映画『パッチギ! LOVE&PEACE』の主役(キョンジャ役)オーディションでした。
オーディションの際、中村ゆりは自らの出自を隠さずに名乗り出て、激戦を勝ち抜いて主役の座を射止めました。当時の取材や映画祭の舞台挨拶において、彼女は「自分の出自を前向きに捉え、演じることで恩返しがしたい」という趣旨の告白を行っています。この覚悟と演技が高く評価され、第3回おおさかシネマフェスティバル新人賞や全国映連賞女優賞を受賞し、女優としてのブレイクスルーを果たしました。
厳格でありながらも温かく見守ってくれた父親への敬意は深く、父親の教えである「何事にも誠意を持って向き合うこと」が、現在のストイックな演技姿勢の根底に流れています。