かつて「子ども向け施設」という印象が強かった京都市動物園が、なぜ今20代〜60代の大人の来園者を惹きつけてやまないのか。その最大の理由は、園内全面再整備によって実現した「いのちはぐくむ森」をテーマとする画期的な空間設計にあります。総敷地面積約3.8ヘクタールという、全国の大規模動物園と比較してあえてコンパクトなサイズ感を逆手に取り、来園者と動物との距離感を極限まで縮める工夫が凝らされています。
その象徴とも言える施設が、国内屈指の規模を誇る「ゴリラのおうち〜樹上のくらし〜」です。ここでは、ニシゴリラの家族群が本来持つ社会的関係性を維持できるよう、高さ約12メートルの屋外放飼場と充実した室内展示場を完備。タッチパネルを使った類人猿の認知能力学習プロジェクトが公開されており、彼らが知性を使って課題を解く様子をガラス越しに間近で観察できます。動物を単に「眺める」のではなく、その高い知性と家族愛を「学ぶ」体験が、知的好奇心の強い大人の心を掴んでいます。
さらに、来園者の頭上を丸太やロープで結んだ「レッサーパンダ」の空中通路展示も絶大な人気を博しています。すぐ真上をふさふさとした尾を揺らしながら愛らしく横断していく姿は、他では味わえない臨場感です。ほかにも、スロープを登りながらキリンの顔を同じ目線で眺められるウッドデッキデッキや、ゾウが水浴びを楽しむ様子を見下ろすテラスなど、散策路そのものが洗練された立体構造になっており、岡崎の緑豊かな借景と相まって上質なヒーリング空間を創り出しています。