ハウステンボスのイルミネーションの歴史において、2021年は「クラシカルな光の物量美」から「ストーリー性を持った体験型」への過渡期に位置していました。その代表的な見どころが、アムステルダム広場に展開された「白銀の世界」です。チャペルを背景に、毎夜日没後の決まった時間に実施された点灯式では、澄んだ冬の夜空にパイプオルガンの厳かな旋律やプロのシンガーによる生の歌声が響き渡り、合図とともに広場全体が一瞬にして純白の光で満たされる劇的な演出が繰り広げられました。
もう一つの象徴的エリアが、広大な芝生エリアを活用した「アートガーデン」の「光の滝」です。高さ約66メートルから流れ落ちる青と白の光の奔流は、まるで広大な光の海にダイブするかのような視覚効果を生み出し、運河を巡るカナルクルーザーからの眺望や、観覧車のゴンドラから見下ろす全景など、重層的なアングルで楽しめるよう計算されていました。さらに冬期限定の「光の街のクリスマス」では、本場ヨーロッパ直輸入の雑貨やホットワインが並ぶクリスマスマーケットが展開され、異国情緒あふれる空間が完成していました。
2026年現在の演出と比較すると、その設計思想の違いが鮮明に浮かび上がります。現在は最新のプロジェクションマッピング、AIを活用したインタラクティブ演出、3D音響を融合させた「全身没入型(イマーシブ)」の体験へと大きくシフトしています。しかし、2021年の魅力は、あくまで「圧倒的なLEDの物量と、ヨーロッパ建築そのものが放つ重厚な質感」にありました。デジタルなギミックに頼り切らない、物理的な光の密度が放つ圧倒的な熱量こそが、歴代の演出の中でも2021年版が別格の評価を受ける決定的な要因です。