チェッカーズ(正式名称:Chequers Court)は、イングランド南東部バッキンガムシャー州のエイルズベリー近郊、チルターン丘陵の広大な自然に囲まれた約1,000エーカー(約400ヘクタール)の敷地に建つ邸宅です。ロンドン中心部から車で約1時間半という、適度な近さと隔絶性を兼ね備えたロンドン近郊別荘として位置づけられています。
邸宅の起源は中世にまで遡りますが、現在見られる赤レンガ造りのチューダー調建築は1565年に再建されたものです。ヘンリー8世の孫にあたるレディ・メアリー・グレイがエリザベス1世の命によって軟禁された場所としても知られ、古くから王室や貴族の歴史と深く結びついていました。
名前の由来には諸説存在します。12世紀にこの地を治めていたヘンリー2世の財務官エリアス・ド・チェカーズ(Elias de Chekers)の名に由来するという説が有力視されています。同時に、チェス盤のような市松模様(チェッカー柄)の紋章や、敷地内に自生していたチェッカーツリー(アズキナシの一種)に結びつける伝承も残されています。
この私有財産が国家の首相別荘となった転換点は、第1次世界大戦中の1917年でした。当時の政治家アーサー・リー卿(後のファーラム子爵)夫妻が、「大英帝国の首相は、都市の喧騒から離れ、精神的な静寂と貴族的な品格の中で国家の舵取りを行うべきである」という崇高な理念を掲げ、私財である邸宅と美術コレクションを国に寄贈。議会でチェッカーズ荘園法(Chequers Estate Act 1917)が可決され、1921年に当時のデビッド・ロイド・ジョージ首相が最初の居住者となって以来、100年以上にわたり英国歴代首相の公式カントリーハウスとして継承されています。