夏目雅子さんとの死別後、伊集院静さんは深刻なグリーフ(悲嘆)に陥りました。自暴自棄となり、酒とギャンブルに溺れ、日本各地や海外を放浪する「無頼派」としての日々を過ごします。当時の様子について伊集院さんは自著の中で「自分が生きていること自体への罪悪感があった」と吐露しています。
その絶望の底から彼を救い出したのが「小説を書くこと」でした。ペンネーム「伊集院静」として本格的な作家活動を開始し、1992年には短編小説集『受け月』で第107回直木賞を受賞。トップクリエイターから日本を代表する文豪へと見事な転身を遂げました。
そして同じく1992年、伊集院さんは女優の篠ひろ子さんと再婚を発表します。篠さんは伊集院さんの傷ついた心と破天荒な生活を深く理解し、活動拠点を宮城県仙台市へと移して家庭を支え続けました。伊集院さんが後年まで執筆を続けられた背景には、篠ひろ子さんの献身的な存在があったことは間違いありません。
2023年11月24日、伊集院静さんは肝内胆管がんのため73歳で永眠しました。最期まで作家としてのダンディズムと誇りを失わず、多くの読者に惜しまれながら旅立ちました。