長年、互いに独立した生活を尊重してきた2人が再び同じ屋根の下で暮らし始めたのは2021年のことでした。おすぎさんに認知機能の衰えが見え始めたことを受け、兄のピーコさんが「自分が面倒を見る」と決意し、横浜の自宅マンションにおすぎさんを呼び寄せて同居生活をスタートさせました。
しかし、この決断が過酷な「認認介護」の引き金となってしまいます。介護を一身に背負ったピーコさん自身にも認知症の初期症状が現れ始め、些細な日常の行き違いから激しい口論が頻発するようになりました。関係者や近隣住民の証言によると、互いに強いプライドと深い絆を持っていたからこそ、相手の衰えを受け入れられず、精神的に追い詰められていったとされています。
結果として2022年春、共倒れを防ぐためにケアマネジャーや関係者が介入し、おすぎとピーコの同居解消が決定されました。おすぎさんは専門の介護施設へ入所し、ピーコさんも後に施設へ身を寄せることとなりました。この別居は決して「仲違い」ではなく、限界を迎えた兄弟介護における命を守るための必然的な決断でした。