これほど魅力的な保養所ですが、全国の一等地にあった名門企業の直営施設は、ここ数年で激しい淘汰の波にさらされています。
企業の保養所売却の背景には、少子高齢化に伴う健康保険組合の財政悪化と、固定資産を抱え続けるリスクがあります。バブル期前後に建てられた豪壮な施設は築30年以上が経過し、耐震改修や大規模修繕に数億円規模のコストがのしかかっています。加えて、年金や医療費の負担増に苦しむ健保連各組織にとって、全加入者の数%しか利用しない豪華施設の維持費は、真っ先に削減対象となる「聖域」でした。
さらに保養所の廃止理由として決定的だったのが、若手社員を中心とする「価値観の多様化」です。かつては社内旅行や同僚との保養所利用が歓迎されましたが、プライベートを重視する世代からは「休日に上司や役員と鉢合わせしたくない」「毎年同じ保養所に行くより、好きなリゾートを自由に選びたい」という声が噴出しました。利用率の偏りと不公平感を是正するため、直営施設を手放す経営判断が相次いだのです。