なぜスプレー缶のガス抜きは、これほどまでに甚大な事故へと直結するのでしょうか。過去に全国を震撼させた札幌市の不動産仲介店舗での大規模爆発事故をはじめ、スプレー缶爆発事故室内で発生する事例の共通点は、充填されている噴射剤の物理的性質にあります。
現在市販されているエアゾール缶の多くには、フロンに代わってプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガス(LPG)や、ジメチルエーテル(DME)が充填されています。これらの可燃性ガスは「無色無臭」かつ「空気の約1.5倍から2倍重い」という性質を持っています。窓を開けて換気扇を回していたとしても、重いガスは室内の床面、部屋の隅、家具の隙間へと滑り落ちるように淀み、目に見えない可燃性のプールを形成します。
「部屋の中が危ないなら、外のベランダなら大丈夫だろう」と考える人が大勢いますが、ここに致命的な盲点が存在します。実はスプレー缶ガス抜きベランダ危険と消防関係者が警鐘を鳴らす理由は、集合住宅のベランダに密集している給湯器やエアコン室外機にあります。風が滞りやすいマンションのベランダ床面に溜まったガスが、給湯器の種火や室外機のファンモーターが発する極小のスパークに吸い込まれ、轟音とともに窓ガラスを粉砕する事例が報告されています。
静電気やスマートフォンの操作、換気扇スイッチのオン・オフで生じるわずかな電気火花すら着火源となります。スプレー缶火気厳禁注意点として掲げられている警告は、単に「ライターを近づけない」という意味にとどまらず、「電気回路の微細な接点火花すら排除された環境でなければならない」という物理的な絶対条件を指しています。