王道のチョコレートケーキとは一線を画す、どこか背徳的で深みのある味わい。その源流を探ると、20世紀初頭にまで遡る。アメリカの食文化を形作った伝説的な料理家ジェームズ・ベアードは、かつてこのケーキの濃密な質感と悪魔的な美味しさを「エンジェル・フード・ケーキに対する最も完璧で刺激的な回答」と表現した。
重厚な質感と、舌の上でほどける軽やかさの同居。この対立する二つの要素を見事に融合させたアメリカ伝統洋菓子レシピの代表格として、時代を超えて愛されてきた。ライフスタイルの女王として知られるマーサ・スチュワートも自身のメディアで幾度となく独自の解釈を提示し、洗練されたホームメイキングの象徴へと押し上げた歴史がある。