日常会話で耳にする「かすがい」という語は、もともと日本伝統の木造建築において不可欠とされてきた接合金物の名称です。漢字では金偏に「専」と書く「鎹」と表記されますが、この文字は中国から輸入された漢字ではなく、日本で独自に生み出された国字(和製漢字)に分類されます。「金属(金偏)を用いて、専ら(もっぱら)部材を繋ぎ合わせる」というその機能性が、文字の構造そのものに刻み込まれているのが特徴です。
語源に関しては複数の学説が存在します。有力視されているのは、木と木を交差させて繋ぎ止める行為を指した「交差掛け(こうさかけ)」が転訛して「かすかけ」となり、さらに「かすがい」へと変化したという説です。また、古語において物を繋ぎ留める杭を意味した「かしぐひ(固杭)」が音変化したとする文献も残されています。
いずれの説においても共通しているのは、「離れようとする2つの個体を、外側から力づくで引き寄せ、1つの強固な構造体として保持する」という物理的な作用です。この極めて強靭な緊結作用こそが、後に夫婦関係や人間関係を繋ぎ止める比喩として転用された最大の理由といえます。