キウイジャム作りで寄せられる三大失敗が「とろみがつかない(固まらない)」「茶色く濁った色になる」「食べた後に舌がピリピリと苦い」という現象です。これらは料理の腕前ではなく、キウイ特有の生化学的性質によって引き起こされます。
第1に、キウイジャムが固まらない理由は、ジャムのゲル化に必要な3要素である「ペクチン」「糖分」「有機酸」のバランスの崩れにあります。植物細胞に含まれるペクチンは、酸性条件下(pH2.8〜3.4程度)で糖分が55〜65%(低糖度設計でも最低35%以上)存在するときに網目構造を形成し、水分を抱え込んでゼリー状に固まります。完熟しすぎたキウイはペクチンが分解されて分子量が小さくなっており、酸度も低下しているため、果実自体の力だけでは網目構造を作れません。その結果、何十分煮詰めても水分の抜けた果肉煮のようになり、サラサラとした状態から抜け出せなくなります。
第2に、キウイジャムの変色を防ぐ方法を理解するには、色素成分の熱変化を知る必要があります。グリーンキウイの鮮やかな緑色はクロロフィル(葉緑素)によるものですが、クロロフィルは熱と酸に極めて脆弱です。加熱時間が長くなると、クロロフィルの中心にあるマグネシウムイオンが水素イオンに置き換わり、褐色色素である「フェオフィチン」へと不可逆的に変質します。ぐつぐつと弱火で長時間煮込む昔ながらの製法は、まさに緑色を破壊し、オリーブ色やくすんだ灰色へと退色させる最大の原因です。
第3に、キウイジャムが苦い原因と対策の鍵を握るのが、キウイに高濃度で含まれるタンパク質分解酵素「アクチニジン」と、黒い種に含まれるポリフェノールです。未完熟の果肉をブレンダーやミキサーで高速粉砕すると、黒い種が砕けて内部の渋み成分やエグ味が全体に溶け出します。また、アクチニジンは唾液や舌の粘膜タンパク質を刺激し、ピリピリとした違和感をもたらします。このアクチニジンは約80℃以上の加熱で失活するため、適切な加熱殺菌を行いつつ、調理工程で種を絶対にすり潰さない配慮が欠かせません。