本作で最も視聴者に強烈なトラウマと畏怖を植え付けたのが、顔に凄惨な火傷痕を持ち、言葉を発さずに土俵上の相手を破壊し尽くす怪物力士・静内(しずうち)です。その圧倒的な巨体と本物の立ち合いの圧力に対し、配信当初から「あの怪物は一体誰なのか」「現役力士を連れてきたのか」と騒然となりました。
静内役を演じたのは、元大相撲力士で最高位十両の住洋樹(すみ ひろき/現役時代の四股名:飛翔富士 廣樹)です。現役時代は東洋大牛久高校から中村部屋に入門し、2メートル近い身長と200キロを超える巨躯を武器に土俵を沸かせました。引退後はその規格外の体格を活かしてアメリカを拠点にタレント活動や相撲普及イベントに出演していましたが、本作のオーディションで江口カン監督らの目に留まり、ラスボスとしての起用が決まりました。
劇中で見せる立ち合いの重み、相手力士を軽々とリフトアップして叩きつける怪力は、付け刃の演技指導では絶対に到達できない「本職」の技術と骨格によるものです。また、言葉を発しない静内の悲哀に満ちた過去や、土俵際で見せる冷徹な眼光など、住洋樹の内に秘めた表現力が高く評価され、国内外の映像業界から熱烈なオファーが相次ぐ契機となりました。
さらに、膝の故障に苦しみながら部屋の屋台骨を支え、猿桜の壁となって立ちはだかるベテラン関取・猿谷(えんほう)役を演じた澤田賢澄(さわだ けんしょう)も、元千代大海の弟弟子にあたる元幕下力士(四股名:千代の眞)です。土俵を去る男の哀愁と、後輩にすべてを託すクライマックスの取組で見せた涙は、自らの相撲人生を土俵に投影したかのような真実味を帯びており、作品の情緒的深みを決定づけました。