知性派俳優として数々の難役をこなしてきた石坂浩二が演じた光圀は、それまでの「カッカッカ」と豪快に笑う親しみやすい好々爺ではなかった。彼が目指したのは、学者肌で冷徹な観察眼を持ち、理詰めで悪を正すリアルな徳川光圀だった。しかし、この劇的なイメージ刷新こそが、長年のファンを困惑させる最大の要因となってしまったのである。
毎週月曜の夜8時、お茶の間が求めていたのは複雑な人間模様や史実の再現ではない。悪党がのさばり、土壇場で印籠が掲げられ、一気に悪を打ち払う圧倒的なカタルシスだ。石坂版の光圀はあえて印籠を自ら掲げず、助さん格さんに任せて静観するスタイルを取ることも多く、「爽快感に欠ける」という失望の声が視聴者から相次ぐことになった。