なぜ特定の人物ばかりが、組織の失政や摩擦のしわ寄せを食らうのか。社会心理学の知見によれば、集団内部の緊迫や歪みが頂点に達した際、組織の全滅や空中分解を防ぐための無意識の「安全弁」として特定の個人の排斥が始まる。これがいわゆるスケープゴート現象だ。
組織が深刻な機能不全に陥ったとき、根本的な課題に向き合う作業には多大なコストと痛みが伴う。業績の低迷やマネジメントの失策という真の原因を覆い隠し、集団の過ちを一人の人間の責任にすり替える。ターゲットが批判を浴びることで、残りのメンバーは奇妙な連帯感と束の間の安息を得るのだ。極めて歪んだ心理的防衛機制と言わざるを得ない。