京都八百一本館のエレベーターを降りて3階に足を踏み入れた瞬間、来訪者の多くが息を呑みます。京都の市街地中心部、空が開けた屋上に約1,000平方メートルの土壌が広がり、季節ごとの野菜が青々と葉を茂らせる屋上農園「六角農場」が目の前に広がるためです。
多くの商業施設で見られる形式的な屋上緑化とは異なり、六角農場は「本気で野菜を育てる生産農場」として設計されています。土の厚みや水はけ、日照条件を綿密に計算し、青果のプロであるセントラルフルーツのスタッフが日々手作業で手入れを行っています。訪れた買い物客や食事客は、ガラス越しに野菜の成長過程を観察し、自分が口にする食材の原風景を直接目の当たりにすることになります。
都市生活者が日頃忘れがちな「土から食卓へ」という循環のストーリーを、買い物や食事という日常行動の中で無理なく体験できる構造こそ、京都八百一本館が単なるスーパーマーケットにとどまらず、国内外の都市プランナーやフード関係者からも視察が絶えない最大の要因です。