スペイン国旗のデザインは常に一本調子で受け継がれてきたわけではありません。20世紀の激動の政変に伴い、国旗は劇的な変化を遂げました。
1931年に王政が倒れて成立した第二共和政時代には、最下部の赤が「カスティーリャの民衆」を意味する紫色に変更され、赤・黄・紫の三色旗となりました。王冠も城壁を模した「市民冠」へと差し替えられるなど、王政の完全な否定が図られます。
しかし、その後のスペイン内戦を経て成立したフランコ独裁政権時代(1939〜1975年)には、配色は再び伝統の赤と黄色に戻されたものの、国章には巨大な「聖ヨハネの鷲」が配置され、カトリック両王の象徴である「弓矢の束」と「軛(くびき)」、そしてファシズム色の強いスローガン「Una, Grande y Libre(一つにして偉大、自由)」が掲げられました。
1975年のフランコ総統死去と民主化への移行を経て、1978年憲法によって現行の洗練された国旗・国章が正式に定められました。権威主義の象徴であった鷲の意匠を排し、伝統的な中世諸王国の融合へと立ち返った現在の姿には、内戦の痛みを乗り越えて統合を果たしたスペイン国民の願いが込められています。