本作を語る上で欠かせないのが、竹宮ゆゆこによる原作小説と、SABU監督による実写映画版のアプローチの差異です。大筋のプロットは原作に忠実でありながら、媒体の特性を活かした表現技法の違いにより、受け手に与える鑑賞後感には明確なコントラストが存在します。
原作小説は、語り手である清澄の一人称視点で紡がれる軽妙なモノローグと、内面の繊細な葛藤が大きな魅力です。青春小説特有の疾走感と瑞々しい言葉選びで読者を引き込みながら、突如として口を開く家庭内暴力の暗闇を心理サスペンスとして深く掘り下げています。一方の映画版は、SABU監督が得意とするダイナミックなカメラワークと疾走感、そして視覚的なショック演出を前面に押し出しています。
映画版では、中川大志と石井杏奈が体当たりで演じたアクションと感情の爆発が、映像ならではのダイナミズムを生み出しています。一方で、清澄が抱えていた純粋な正義感の繊細な揺らぎや、玻璃が絶望から希望を見出すまでの思考プロセスを隅々まで味わいたい場合は、原作小説を読むことで作品理解が何倍にも深まります。