音楽理論の観点からも、『春よ、来い』には日本人の耳を惹きつけて離さない緻密な仕掛けが散りばめられています。最大の特長は、日本の伝統的な「ヨナ抜き音階(雅楽や民謡に通じる五音音階)」をベースにしながら、洗練された現代ポップスのテンションコードを巧みに融合させている点です。
イントロの象徴的なピアノリフは、どこか懐かしい郷愁を誘いながらも、哀愁と気品を同時に漂わせます。サビに向かって哀感を帯びたマイナー進行から、一気に光が差し込むようなメジャー感へとドラマチックに展開する構成は、まさに厳冬から雪解けの春を迎える景色の移ろいを音で体現した職人技と言えます。
この完成された旋律美ゆえに、ピアノ愛好家からの支持も絶大です。ピアノ楽譜は初級者向けから上級者向けの華麗なアレンジまで膨大なバリエーションが出版されており、ピアノ発表会やストリートピアノでの定番曲として不動の地位を保っています。