食事療法に取り組む過程で多くの人が陥るのが、「体に良いものを食べているから大丈夫」という油断です。どれほど熱心にカリウムやペプチドを補給しても、同時に血管を破壊する悪玉食品を摂取していては努力が水泡に帰します。医学的な見地から高血圧で避けるべきNG食べ物の筆頭に挙げられるのが、日常に深く潜む「隠れ高ナトリウム食品」です。
最も危険なのは、加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージ)や練り製品(ちくわ、かまぼこ)です。これらは保存性を高めるために大量の食塩が使われているだけでなく、結着剤として添加されるリン酸塩が血管内皮の石灰化を進行させることが懸念されています。ソーセージを2〜3本つまむだけで、成人の1食あたりの食塩目標値(約2g)をあっさりオーバーしてしまいます。
また、日本人の食文化に根付く「麺類のスープ完飲」は最大の鬼門です。一般的なラーメンの汁には約5〜6gの食塩が溶け込んでおり、最後の一滴まで飲み干す行為は、1日の許容量をわずか10分で使い切ることを意味します。スープを残すだけで約3〜4gの減塩が即座に達成できるため、この1点だけでも血圧推移に目に見える変化が現れます。
さらにネット上の健康情報における最大の盲点が、「腎機能とカリウム摂取のトレードオフ」です。血圧降下に万能とされるカリウムですが、健診でeGFR(推算糸球体濾過量)の低下を指摘されている人や慢性腎臓病(CKD)患者が過剰に摂取すると、腎臓からの排泄が追いつかず高カリウム血症を引き起こします。最悪の場合は重篤な不整脈や心停止を招く恐れがあるため、「誰にとってもカリウムが正解」という短絡的な理解は極めて危険です。
塩気を減らしても味覚の満足度を落とさないためには、減塩レシピを簡単に成立させる調理の引き算が必要です。食塩や醤油を減らす代わりに、レモンやスダチの「柑橘類の酸味」、生姜やミョウガ、大葉などの「香味野菜」、そしてブラックペッパーやカレー粉といった「スパイス」を効かせることで、脳の味覚中枢は塩分不足を感知しにくくなります。