なぜゴールドシップは変顔をするのか?舌出し怪表情の真相と現在を追う

なぜゴールドシップは変顔をするのか?舌出し怪表情の真相と現在を追う

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誰の手にも負えない暴れ馬として恐れられたゴールドシップですが、その生涯を語る上で欠かせないのが、担当厩務員を務めた今浪隆利氏の存在です。二人の関係は調教スタッフと競走馬という業務的な枠組みを遥かに超えた、魂の通い合いとでも呼ぶべきものでした。

今浪氏は当時の特番インタビューや自著・手記において、次のような生の告白を残しています。「最初は本当に怖かった。馬房に入る時も命がけで、いつ噛みつかれてもおかしくない目をしていた。でも、あいつは人の気持ちを信じられないくらい敏感に察知する。こっちが気負ったり嘘をついたりすると、すぐに見抜いて試してくるんです」。

気性の荒いステイゴールド産駒であり、母の父メジロマックイーン譲りの巨躯を持つゴールドシップは、他人が触れようものなら本気で蹴り飛ばしにかかる猛獣でした。しかし、今浪氏が馬房を訪れると、ゴロゴロと甘えた声を出しながら鼻先を押し当て、下唇をブルブルと震わせて変顔を見せました。今浪氏が本気で叱ると、ふっと視線をそらして口を半開きにし、「反省しています」とでも言いたげなとぼけた顔を作ったといいます。

凱旋門賞への遠征時も、見知らぬ異国の地で精神的に追い詰められたゴールドシップを支え続けたのは今浪氏でした。現役引退から歳月が過ぎ、今浪氏がビッグレッドファームへ再会に訪れた際にも、遠くから足音と声を聞きつけた瞬間に放牧地の柵まで駆け寄り、往時のように顔を寄せて甘える姿が記録されています。ゴールドシップが見せる変顔の数々は、彼なりの最大の親愛表現であり、絶対的な信頼を寄せた今浪氏だからこそ引き出せた奇跡の表情だったのです。

田中 結衣
著者

田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。