警察庁の交通指導取締りにおいて、ベテランドライバーですら検挙時に抗議の声を上げることが多い典型例が左側からの追い越し違反(追越方法違反)です。
道路交通法第28条第1項には「車両は、他の車両を追い越そうとするときは、その右側を通行しなければならない」と定められています。例えば、片側2車線の道路で右側(追越車線)を走る前走車の速度が遅いからといって、一旦左側の走行車線に車線変更し、前車の左側を通り抜けて再び右側車線に戻る行為は、典型的な「左側追い越し」であり明確な違反です。
ここで疑問が生じるのが、「左車線を走行中、右車線の車が遅かったため、車線を変えずにそのまま通り過ぎた場合」の適法性です。このケースは進路変更を一切行っておらず、単なる「追い抜き」に分類されるため、原則として違反には問われません。追い抜きの定義と違法性を精査する上で、警察官が取り締まりの基準とするのは「左車線へ移動した目的が前車の前に出るためだったか」「抜いた直後に前走車の前に割り込んでいないか」という走行軌跡の連続性です。
また、これと密接に連動するのが高速道路の追越車線ルールです。高速道路で右側の追越車線を走り続ける行為は「通行帯違反」(点数1点・反則金6,000円)に問われます。取材した交通機動隊関係者の証言によると、「前走車が追越車線をノロノロ走り続けていることに苛立ち、左からジグザグに追い越していく車両が多発している。しかし、前車が通行帯違反を犯しているからといって、後続車が左側追い越しをしてよい免責事由には一切ならない」と警鐘を鳴らします。
さらに、追越車線を走行して前車を追い越す際、追越される側の車両にも法的な義務が発生します。それが道路交通法第27条に定められた追いつかれた車両の義務です。後続車に追いつかれ、相手が追い越しを完了するまで速度を上げて邪魔をしたり、進路を譲らなかったりする行為も違反対象となり得ます。高速道路のトラブルは、抜く側と抜かれる側の双方がルールを曲解している現場から生まれているのが実態です。