献体された遺体は、防腐処理を経て医学部の解剖学実習に使用される。ここにも大きな「落とし穴」が存在する。遺体が大学側に引き取られてから、遺骨となって家族の元へ戻るまでに、通常1年から長い場合には3年以上という長い歳月を要するのだ。
将来の医師を育てる医療・医学教育において、実際の人間を解剖し構造を学ぶ実習は不可欠なプロセスである。しかし、数年間もお骨がない状態が続くことで、四十九日や納骨といった節目のお弔いが行えず、遺族は気持ちの整理をつけられないまま「宙吊りの時間」を過ごすことになる。「お墓に納める骨すらない」という状況は、想像以上に残された者の心を苛み続ける。