ショートボブの施術において最も多い相談が、「まるでヘルメットをかぶったような不自然な直線美(通称:こけし化)」や「毛先が四方へ跳ねて収まらない」という失敗事例です。この現象が起きる背景には、毛髪物理とサロンワークにおける2つの決定的な要因が存在します。
第一に、根元立ち上がりの消失です。くせ毛を伸ばそうとするあまり、頭皮付近の生え際から強力なアルカリ性薬剤を塗布し、テンション(引っ張る力)をかけてアイロンを通すと、髪の毛本来の自然な浮きが完全に潰れてしまいます。ショートレングスでは頭頂部から側頭部にかけての適度なふんわり感が骨格補正を担っているため、ここが真っ直ぐになりすぎると頭蓋骨の形状がそのまま露出し、いわゆる「ぺたんこ髪」に陥ります。
第二に、毛先の熱変性による硬化です。高温のアイロンで毛先まで平面的にプレスしてしまうと、毛髪内部のタンパク質が凝固し、しなやかな丸みを帯びる柔軟性が失われます。短い髪は毛先のカーブが内側を向くことで美しいボブのアーチを描くため、直線的に固まった毛先は首元に沿わず、ピンピンと突っ張った印象を与えてしまいます。