日本の社会派ミステリーの礎を築いた巨匠、松本清張。彼の作品群に流れる「人間の欲望がもたらす悲劇と社会機構の歪み」というテーマが、現代の感性で見事に再構築されている。昭和のミステリー黄金期を支えた角川映画の持つ洗練された娯楽性と、東映が誇る骨太で骨がらみの泥臭い人間模様。この相反する二大潮流のスピリットが見事に融合を果たした。
濃密な闇と光のコントラストを描く映像美は、まさに重厚な心理サスペンス劇の真骨頂と言える。現代のデジタル社会において、誰が味方で誰が敵か分からないサスペンスの緊張感は、かつての黄金期映画を知る映画ファンをも唸らせる仕上がりだ。古き良き日本のミステリー美学と最先端の映像手法が、見る者を深い惑乱へと誘う。