『二月の勝者』最終章において読者が最も固唾を呑んで見守ったのが、桜花ゼミナール吉祥寺校に集ったΩ(オメガ)クラスをはじめとする生徒たちの合否結果です。高瀬志帆氏が描いたのは、全員が第1志望に受かるような甘いファンタジーではなく、極めてシビアな現実と、その先にある人間的成長でした。
最上位層であるΩクラスの看板を背負った前田花恋は、かつて名門塾フェニックスから桜花に戻り、プレッシャーと闘いながら女子最難関である桜蔭中学校に見事合格。自らのプライドと学問への純粋な情熱を結実させました。
そして本作最大のエモーショナルな山場を築いたのが、上杉海斗の戦いです。名門フェニックスに通う優秀な双子の弟・陸斗の陰で劣等感を抱えていた海斗でしたが、黒木との出会いを通じて覚醒。2月1日入試で見事に開成中学校へ合格を果たし、弟の陸斗と共に「開成の双子」となる奇跡を演じました。父親による無意識の教育虐待に近い偏見を、海斗自らの学力と精神的自立で打ち破った瞬間は、読者の涙を誘いました。
一方、女子最難関の一角を狙った島花音は、女子学院の壁に阻まれる苦杯を舐めたものの、難関校である豊島岡女子学園中学校への合格を掴み取ります。「不合格の悔しさ」を受け止めつつ前を向く花音の姿は、中学受験が決して白黒の勝敗だけでは測れないことを雄弁に物語っています。