かつてネットの掲示板やSNSでは、窪田正孝に対して「演技力は天才的なのに、出演作の脚本や座組みに恵まれない」という論壇が散見された時期がありました。しかし、その不当なジンクスを鮮やかに粉砕した決定打こそが、この『アンナチュラル』でした。
放送当時のネットの反応を振り返ると、第2話の冷凍車に閉じ込められる緊迫したシチュエーションでの迫真の演技や、第9話で自らのスパイ行為が暴かれた際に見せた「罪悪感に押しつぶされそうな瞳の震え」に対し、賞賛の嵐が巻き起こりました。セリフのない瞬間でも、六郎の指先の躊躇いや視線の彷徨いだけで、心中の葛藤をすべて観客に伝えてしまう身体表現のリアリティは、専門の劇評家からも極めて高い評価を獲得しました。
また、アンナチュラルにおける石原さとみと窪田正孝の共演も特筆に値します。ミコトと六郎の間には、安易な恋愛感情(いわゆるラブコメ的な展開)を一切排した「先輩法医解剖医と後輩記録員」、そして「生きる痛みを共有する戦友」としての神聖なバウンダリーが引かれていました。六郎がミコトに対して抱く微かな憧憬と尊敬の念を、窪田は過剰に甘化させることなく、誠実で清々しいグラデーションで演じきったのです。