『おかあさんといっしょ』の人形劇は、単なるマスコットアニメーションではなく、常にその時代の家族像や社会通念を鋭く捉えたモチーフが選ばれてきました。
1980年代を牽引した『にこにこ、ぷん』の主人公たちは、実はそれぞれが大きな「欠点や影」を背負ったキャラクター設計でした。脚本を手掛けた井出隆夫氏の構想では、「完全無欠なヒーローではなく、どこか欠落のある子どもたちが助け合う姿」が徹底して描かれています。
- 袋小路じゃじゃまる:親のいない山猫。乱暴者に見えるが情に厚く、母親への憧れを胸に秘めている。
- ふぉるてしも・ぴっころ:おしゃまで気が強いが、実は太っていることを気にしており、寂しがり屋。
- ぽろり・カジリアッチIII世:名門貴族の家柄でバイオリンが得意だが、極度の怖がりで泣き虫。
この「欠点を受け入れ合うリアルな友情」が、昭和後期の子どもたちに圧倒的な説得力を持って響きました。
続く1990年代の『ドレミファ・どーなっつ!』では、さらに踏み込んだモチーフの現代化が行われました。舞台となった「ドレミファ島」には、共働き家庭やシングルマザー家庭、国際色豊かな背景が盛り込まれました。カラスの空男は女手一つで育てられている設定であり、プードルの双子みど・ふぁどは都会から引っ越してきた設定でした。1990年代の急速な都市化と核家族化、家族形態の多様化を先取りした設定は、幼児番組の枠を超えた先駆的な試みでした。