本尊として本堂中央に座す渡海文殊群像(国宝)は、鎌倉彫刻の極致として世界的な評価を受ける巨像だ。手掛けたのは、運慶と並び称される大仏師・快慶。雲海を渡り、獅子の背に乗って知恵を授けに訪れる文殊菩薩の姿は、総高約7メートルという威容を誇りながら、指先ひとつの動きに至るまで極めて繊細に彫り抜かれている。
脇侍を務める4体の従者――善財童子、優填王、仏陀波利三蔵、最勝老人――が織りなす空間構成は圧巻の一言に尽きる。文化庁による長年の学術調査と保存修復の取り組みによって、その彩色と截金文様は今なお鮮烈な輝きを保つ。現在は華厳宗に属する同院において、この群像は単なる信仰の対象を超え、中世日本の宗教芸術が到達した奇跡の到達点として拝観者の眼前に迫る。