12年にわたる過酷な在宅介護とリハビリを支え続けたのが、妻の野坂暘子(ようこ)氏(元宝塚歌劇団男役スター・藍葉子)と、長女の麻央さん、次女の愛乃さんら家族の存在でした。
酒豪で知られ、奔放かつ破天荒な性格だった野坂氏を長年陰から支えてきた暘子夫人は、夫が脳梗塞で倒れた後も自宅での介護を決意します。言葉が思うように出ず、苛立ちを募らせる夫の心情を誰よりも深く理解し、手足となって執筆をアシストしました。その二人三脚の闘病記は、後に著書『リハビリ・ダンディ』や『寄り添って六十年』などの手記としても綴られています。
夫人の献身的なケアと娘たちの愛情深い見守りがあったからこそ、野坂氏は病床にあっても社会への鋭い眼差しを失わず、最後まで「文豪・野坂昭如」であり続けることができました。