「滑って危ないから、とにかく一番強力なテープを貼れば安心」という直感的な判断は、住環境において極めて危険な罠となり得ます。住宅設備の専門家が最も警鐘を鳴らすのが、一般的な複合フローリングやクッションフロアに対する直貼り施工です。
安価な粘着テープの多くには、柔軟性を保つために石油由来の可塑剤や汎用アクリル粘着剤が使われています。これらを木質床材に長期間圧着させると、時間の経過とともに粘着成分が木目の微細な隙間へ浸透します。さらに室温の上昇や歩行圧が加わることで化学変化を起こし、いざ剥がそうとした際に「粘着層だけが床側に残り、基材フィルムだけが千切れる」という最悪の固着現象が発生します。
もう一つの見落とされがちな盲点が、ザラザラした鉱物粒子(アルミナ等)をコーティングした高摩擦タイプを室内の階段で使ってしまうケースです。本来は屋外階段やステップ用として設計された製品をスリッパや靴下履きの室内で使用すると、通行するたびに靴下の繊維がヤスリで削られるように摩耗します。また、モップやロボット掃除機のブラシを激しく傷める原因にもなります。室内環境には粒子タイプではなく、凹凸エンボス加工を施した100均透明滑り止めテープを選択するのが鉄則です。