なぜマグロはこれほどまでにリスクの高い呼吸様式を選んだのでしょうか。その背景には、一般魚類とは比較にならない莫大なマグロの酸素摂取量と代謝システムがあります。
マグロは魚類でありながら、奇網(奇脈網:向流熱交換器)と呼ばれる特殊な血管網を持ち、体温を周囲の水温より10℃〜15℃以上も高く維持する「内温性(半恒温性)」を獲得しています。筋肉を温かく保つことで外洋の冷たい深海でも爆発的な運動性能を発揮できる反面、その代謝率と酸素消費量は沿岸の底生魚に比べて桁違いに高くなっています。
ラム換水法は、魚自身がエラを動かす筋肉エネルギーを消費せず、遊泳の前進エネルギーをそのまま呼吸換水に利用できる極めてエネルギー効率の高い方式です。広大な外洋を何千キロも移動する回遊魚にとって、泳ぎ続ける限りは無駄な呼吸エネルギーを使わずに済む究極の合理化システムといえます。