かつて週末や給料日後に定期開催されていた「10個1000円セール」や「100円均一セール」は、なぜ忽然と姿を消したのか。その背景には、単なるコスト増にとどまらない、フランチャイズビジネスの根幹に関わる構造改革が存在した。
ミスタードーナツを展開するダスキンが公表した過年度の事業方針説明会資料によると、2000年代後半から2010年代前半にかけて展開された頻繁な100円セールは、短期的には集客効果を生んだものの、中長期的に甚大な副作用をもたらした。消費者の間に「ミスドは定価で買ってはいけない」「100円セール以外の日に買うのは損」という強烈なアンカリング(価格の基準付け)が形成され、通常営業日の客足が著しく鈍化する事態に陥ったのである。
さらに現場の店舗スタッフからは「セール期間中は早朝から深夜までドーナツを揚げ続けなければならず、労働環境が過酷を極める」「それにもかかわらず利益率が低く、現場が疲弊する」という悲痛な声が噴出していた。折しも2016年頃より、同社は「薄利多売のデフレ型ビジネスモデル」に明確な終止符を打つ方針を打ち出した。過度な価格訴求をやめ、素材や製法を見直した「高品質路線」へと舵を切ったことが、100円セールおよび10個1000円というパッケージ企画が終了した最大の真相である。