かつて南米予選といえば、ブラジル代表にとって「首位通過が当たり前」の登竜門に過ぎなかった。しかし、今大会の予選プロセスでは、下位グループに甘んじる屈辱的な時期を過ごすなど、国内外に激震が走った。サッカーブラジル代表の苦戦の理由を紐解くと、ピッチ上の一時的な不調にとどまらない3つの構造的要因が浮かび上がる。
第1の要因は、「指揮系統の混乱と戦術哲学の急激な断絶」である。2022年カタールW杯後にチーチ監督が退任して以降、ブラジルサッカー連盟(CBF)はカルロ・アンチェロッティ氏の招聘に固執した。その繋ぎとして招聘されたフェルナンド・ジニス前監督は、極端なポジションフリーと密集を重んじる独自の「関係性志向フットボール(リレーショニズム)」を導入。だが、欧州の洗練されたポジショナルプレーに慣れ親しんだ選手たちとの間に致命的な戦術的摩擦を生み、わずか数日の代表合宿では練度を上げられず、守備の破綻と単調なポゼッションミスを連発する結果となった。
第2の要因は、「絶対的ゲームメーカー不在による攻撃の機能不全」だ。長年セレソンの命運を背負ってきたネイマールが重傷でピッチを去ると、中盤から前線にかけて「誰がボールを引き出し、相手の守備ブロックを崩すのか」という設計図が完全に消失した。ブルーノ・ギマランイスやルーカス・パケタといった実力者は揃うものの、南米特有の激しいフィジカルコンタクトと徹底したリトリート(後退守備)を個のインスピレーションで打破できる絶対的な創造主が欠落していたのだ。
第3に、「南米各国の急速な戦術的成熟と欧州化」が挙げられる。ウルグアイを率いるマルセロ・ビエルサ監督の徹底したハイプレス戦術や、リオネル・スカルローニ監督率いるアルゼンチンの洗練された連動性に比べ、セレソンは「個人の打開力頼み」から脱却できていなかった。南米サッカー連盟(CONMEBOL)加盟国の全体的な底上げに対し、組織戦術のアップデートを怠ったブラジルが足元をすくわれるのは必然の帰結だったと言わざるを得ない。