SNSや大手知恵袋などのコミュニティでは、「白菜に黒い点があったので外葉を半分以上捨てた」「スーパーにクレームを入れたら良品と交換してくれた」といった投稿が毎年冬になると繰り返される。これらは、視覚的な違和感から腐敗を連想してしまう消費者の過剰防衛が生み出す現象である。
人間には、食物の表面に不自然な斑点や変色を認めた際、本能的に毒物や腐敗菌を忌避しようとする「病原体回避バイアス」が存在する。均一で美しい農作物が整然と並ぶ日本の流通システムに慣れ親しんだ結果、自然由来の生理反応に対して「不良品」というレッテルを貼ってしまいやすい背景がある。
では、実際に口にした場合の味や食感はどうなのか。食品科学の官能評価テストにおいて、ゴマ症が多発した白菜と斑点のない白菜を加熱調理して比較したデータでは、被験者の9割以上が味や食感の差を識別できないという結果が出ている。生食で意識的に食べ比べた場合に極めて微小な歯ごたえの違いを感じるケースはあるものの、苦味やエグ味が生じることはない。つまり、見た目の違和感を除けば、調理上のデメリットは実質的に皆無といえる。