洋食店を洋食店たらしめている最大のアイコンといえば、艶やかな光沢と重厚なコクを誇るデミグラスソースです。本場フランス料理のエスパニョールソースやフォンドボーを源流としながらも、日本の老舗洋食店デミグラスソースは独自の進化を遂げてきました。
牛骨、牛スジ、香味野菜を寸胴鍋で強火で焼き付け、トマトや赤ワインを加えて弱火で数日間煮込む。さらにそれを濾して再び煮込むという工程を幾度も繰り返し、完成までに1週間から10日以上の時間を費やす店も珍しくありません。老舗と呼ばれる名店では、長年継ぎ足されてきた「種火のようなベース」に新しいソースを合わせることで、新旧の旨味が幾重にも重なる奥行きを生み出しています。
スプーンですくい上げた瞬間に立ち上る香ばしい苦味と、後から追いかけてくる芳醇な甘み。このデミグラスソースが、肉汁あふれる手ごねハンバーグやじっくり煮込まれたビーフシチュー、薄焼き卵で包まれたオムライスと一体化することで、他では絶対に味わえない唯一無二の洋食体験が完成します。