文豪・織田作之助が描いた不朽の名作、映画『夫婦善哉』。森繁久彌と淡島千景が演じたあのやるせなくも温かい男女の機微の背景にも、生玉の空気が濃厚に漂っている。主人公たちが立ち寄り、すがり、涙を落とした上町台地の坂道と境内。庶民の哀歓をすべて包み込んできた懐の深さが、この場所にはある。
近年では、国内外で制作される本格的な神道・歴史ドキュメンタリーの舞台として、生國魂神社が選ばれるケースが急増している。古代祭祀の原形を留める神事の厳粛さと、門前町が育んだ芸能史のコントラスト。カメラのレンズを通して映し出される陰影は、観る者に「日本人にとっての祈りとは何か」を鋭く問いかけてくる。