渡月橋を語る上で欠かせないのが、川との共生と水害対策の歴史です。2013年9月の台風18号では桂川が氾濫し、渡月橋周辺の旅館街や商店が大規模な浸水被害に見舞われました。橋の欄干まで濁流が押し寄せる当時の映像は、日本中に強い衝撃を与えました。
しかし、現在の渡月橋周辺は最新鋭の防災インフラによって堅牢に守られています。国土交通省近畿地方整備局および京都府・京都市が進めた河川改修事業により、大規模な河床掘削と樹木伐採が完了し、水の流下能力が大幅に向上しました。
特に特筆すべきは、2020年代初頭に整備された景観配慮型の「可動式止水壁(起伏式止水壁)」です。普段は石畳の遊歩道として完全に地面へ格納されており、古都・嵐山の美しい景観を一切損ないません。増水時には油圧システムによって自動または手動で立ち上がり、桂川の氾濫水を物理的に遮断します。
自然の脅威と伝統景観の保全という難題に対し、最先端の土木技術で答えを出した現在の渡月橋エリアは、国内外の観光客が安心して滞在できる強靭な観光地へと進化を遂げています。