SNSや生き物コミュニティで時折話題になる「カタツムリは恋矢を刺し合って寿命を縮めている」という言説。一見すると都市伝説のようにも聞こえますが、これは近年の進化学・行動生態学の研究で実証された科学的事実です。
国内外の軟体動物研究機関や大学の研究チーム(東北大学や海外の進化生物学研究グループなど)による実験データでは、恋矢による物理的・生理的影響について驚くべき報告がなされています。
恋矢は単に皮膚の表面に刺さるだけでなく、時には相手の殻を貫通したり、内臓器官深くまで突き刺さったりすることがあります。物理的な組織損傷はもちろんのこと、打ち込まれた化学物質(アロホルモン)を代謝・解毒するために多大な生理的エネルギーが消費されます。複数の実験において、「恋矢を頻繁に受けた個体は、そうでない個体に比べて統計的に有意に寿命が短くなり、産卵数が減少する」というトレードオフ(代償関係)が確認されています。
つまりカタツムリの交尾とは、自らの遺伝子をより多く残したいという「利己的な思惑」と、相手からの過剰なダメージを避けたいという「防衛の駆け引き」が激突する、文字通りの命がけの攻防戦なのです。