作中でブラックバードが辿ったチューニングの軌跡は、日本の最高速シーンの歴史そのものです。当初のポルシェ911(930型ターボ)から、激化する首都高のスピードレンジに対応するため、シャシー剛性と空力特性に優れる964型へとボディパネルや骨格をアップデート。このポルシェ930と964の違いはマニアの間で長く議論されてきましたが、リヤのサスペンション形式(トーションバー式からコイルスプリング式へ)の進化やフロア下の整流効果など、時速300km域でのスタビリティ確保において決定的な役割を果たしました。
マシンの心臓部を手掛けたのは、かつて悪魔のZを生み出した「地獄のチューナー」こと北見淳です。北見が手掛けた仕様では、空冷水平対向6気筒エンジンを3.3Lから3.6L、さらには3.8Lへとボアアップし、ツインターボ化とモーテック(MoTeC)による超精密制御を導入。その戦闘力は以下の比較データが示す通り、当時のスーパーカーを遥かに凌駕していました。
ボディワークにおいては、ボディショップ・サンライズの高木によるパネル修正、空力と冷却を両立させる特注エアロパーツ、そしてカーボン製ドアやアクリルウインドウの採用など、軽量化と高剛性化の追求に一切の妥協がありませんでした。後部座席はもちろん内装も限界までストリップされ、走るためだけの純粋な機能美が宿っていたのです。