歌舞伎の舞台において、踊りの巧拙は役者の骨格を決める決定的な要素だ。十代目 坂東三津五郎は、日本舞踊の五大流派の一つである坂東流の家元として、その卓越した技巧と気品で観客を唸らせ続けた。無駄を極限まで削ぎ落とした摺り足、指先一つにまで感情を行き渡らせる繊細な身のこなしは、まさに天性の才能と過酷な鍛錬が生み出した結晶である。
舞踊劇における彼の佇まいには、江戸の「粋」と洗練されたユーモアが同居していた。『喜撰』や『棒しばり』などで見せた洒脱な表現は、理屈を超えて見る者の心を弾ませる。伝統芸能の型を徹底的に身体化していたからこそ、そこから解き放たれた自由な躍動が生まれたのだ。