作家としての彼女の真骨頂は、傷つきながらも生を熱望する女性の生々しい感情を描き切る点にあった。自身の泥沼の恋情を投影した代表作『夏の終わり』は、男女の業を極限まで描き出し、後に映画『夏の終わり』としても映像化されて多くの人々の胸を打った。己の血を流すように書かれた自伝小説の数々は、日本文学の歴史においても異彩を放っている。
出家後も執筆の筆を休めることはなかった。むしろ、僧侶としての視点が加わったことで、作品世界はより一層の深みと普遍性を獲得していく。『花に問え』で高い評価を受け、最高峰の文学賞である谷崎潤一郎賞を受賞。さらに長年の精力的な執筆活動と文化への多大な貢献が認められ、ついに文化勲章を受章するに至った。情熱に身を焦がした青春期から、知性と慈悲を兼ね備えた大作家への変貌。そこには一貫して、人間の孤独と救いを見つめ続ける執念が存在していた。