ネット上の相談でよく見られる「前歯の先端を削れば、歯並び全体が小さく整うはずだ」という認識は、咬合解剖学(噛み合わせの医学)の観点から明確な誤解です。
第一の盲点は、縦横の黄金比率(プロポーション)の崩壊です。日本人の美しい前歯の縦横比は「幅:高さ=約1:1.2(横幅が縦の約80%)」とされています。長さを気にして先端だけを削ると、四角く潰れたような不自然な形状になり、かえって横幅の太さが強調されるパラドックスが生じます。
第二の盲点は、すきっ歯や噛み合わせの悪化です。前歯の横幅を縮めようと側面を削ると、隣の歯との間に隙間(ブラックトライアングルやすきっ歯)が生じ、発音障害や食べかすの停滞を招きます。すきっ歯を埋めるためにダイレクトボンディングやラミネートベニアを追加すると、結果として数百万円規模の追加出費に発展する事例も珍しくありません。
なお、審美目的で行った前歯切削やセラミック治療は、原則として国税庁の定める医療費控除の対象外です。「噛み合わせの機能改善」など医師の明確な診断書がない限り、税制上の優遇措置は受けられない点もあらかじめ計算に入れておく必要があります。