維管束の内部には、役割を明確に分担した2つの輸送ルートが存在する。水と無機養分を運ぶ道管、そして光合成によって作られた糖などの有機養分を全身に届ける師管だ。植物生理学の視点から見ると、この2系統の並走こそが陸上植物の進化を支えた最大の鍵である。
道管は、細胞が成熟する過程で中身を失い、死んだ細胞の細胞壁だけが連なってできた「中空のストロー」だ。細胞質という障害物をあえて無くすことで、水の摩擦抵抗を極限まで減らしている。対照的に、師管は生きた細胞が連なり、濃度勾配や圧力をコントロールしながらじっくりと栄養を行き渡らせる。無生物的なストローと生きたパイプラインの共存が、植物の巨大化を可能にした。