館内を歩くと、歴代のリーダーシップが刻んだ思想の地層が見えてくる。初代館長を務めた宇宙飛行士の毛利衛氏は、「科学技術を文化として捉える」という揺るぎない基盤を敷いた。宇宙から地球を見つめ直す視点は、長年この場所の背骨となってきた。
現在そのバトンを受け継ぎ、舵を取るのは計算機科学者の浅川智恵子氏だ。視覚障害当事者である浅川氏の就任以降、館内には自律走行型ナビゲーションロボット「AIスーツケース」の実証実験など、誰もが科学にアクセスできるインクルーシブな技術実装が一気に加速した。単に先端技術を眺める場所から、障害の有無や言語の壁を越えて「生きる身体」の可能性を拡張する現場へと、日本科学未来館は鮮烈な脱皮を遂げている。