世界地図におけるトルコの最大の特徴は、文字通り「二つの大陸に跨がる国(経大陸国家)」である点にあります。トルコの総国土面積は約78万3,562平方キロメートル(日本の約2倍)に達しますが、その領域は一様ではありません。地理学上、国土の大部分を占める約97%は西アジアに属する「アナトリア半島(小アジア)」であり、バルカン半島の南東端に位置する残り約3%がヨーロッパ側の「東トラキア地方」に該当します。
この二つの大陸を物理的に隔てている境界線こそが、黒海とマルマラ海を結ぶボスポラス海峡、マルマラ海、そして地中海(エーゲ海)へと抜けるダーダネルス海峡です。幅わずか700メートルほどの狭隘なボスポラス海峡を挟んで、東側にはアジアの広大な大地が広がり、西側にはヨーロッパの都市景観が連なっています。世界広しといえども、日常のフェリーや海底地下鉄、吊り橋を渡るだけで大陸間を瞬時に移動できる都市は他に類を見ません。
では、国際的な分類においてトルコは「アジア」と「ヨーロッパ」のどちらに属するのでしょうか。外務省や国連の地域区分を見ると、地理的には「西アジア」あるいは「中東」に分類されるケースが一般的です。しかし、政治・社会的な枠組みに目を向けると様相は一変します。トルコは1949年に欧州評議会へ加盟し、1952年には北大西洋条約機構(NATO)に加わりました。サッカーの欧州連盟(UEFA)や欧州放送連合が主催する「ユーロビジョン・ソング・コンテスト」にも欧州枠として参加してきた歴史があります。つまり、「地理的には9割以上がアジアだが、政治・軍事・文化の制度設計においてはヨーロッパの一員として振る舞い続けてきた」というのが客観的な事実です。