ディズニープラスでの配信開始直後、SNSやレビューサイトを埋め尽くしたのは歓迎の声ばかりではありませんでした。大手映画レビューサイトのFilmarksでは平均スコアが★3.0前後と伸び悩み、米大手レビュー集計サイトRotten Tomatoesにおいては、批評家支持率が64%とまずまずの評価だったのに対し、オーディエンススコア(一般観客支持率)は一時11%まで急落するという異常事態を記録しました。この凄まじいギャップと炎上の背景には、大きく分けて3つの要因が存在します。
第1の要因は、キャスティングを巡る「ポリコレ批判」と過剰な反発です。1953年のアニメ版では金髪碧眼の妖精としてアイコン化されていたティンカー・ベル役に、黒人とイラン系のルーツを持つ実力派女優ヤラ・シャヒディが起用されたこと、さらに「迷子たち(ロストボーイズ)」の中に少女たちやダウン症の俳優ノア・マシューズ・マトフスキーが含まれていたことが、一部のオールドファンから「過度なポリティカル・コレクトネスによる原作破壊だ」として激しいバッシングを浴びました。公開前から意図的な低評価をつける「レビュー爆撃(Review Bombing)」の標的となったことは、客観的なデータからも明らかです。
第2の要因は、1953年アニメ版が持っていた「陽気で無邪気なファンタジー感」の完全な脱色です。メガホンを取ったのは、『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』や『グリーン・ナイト』で知られる鬼才デヴィッド・ロウリー監督。ロウリー監督はファンタジーの甘美さを削ぎ落とし、北アイルランドの荒涼とした海岸線や曇天の自然光を活かしたリアリスティックでダークな映像トーンを選択しました。家族で明るいディズニー映画を楽しもうと画面をつけた視聴者が、予想外に重苦しく寂寥感漂うトーンに戸惑い、「思っていたのと違って退屈」「暗くてひどい」と感じてしまったミスマッチが酷評の一因となりました。
第3の要因は、主人公ピーター・パンのキャラクター造形の大胆な改変です。従来のピーターは「永遠の少年」の象徴であり、無邪気で頼れるヒーローでした。しかし本作のピーターは、頑固で傲慢、友人の過ちを許せず、自分の都合を他人に押し付ける「未熟で脆い少年」として描かれています。観客が長年抱いてきたピーター・パン像が揺さぶられたことで、拒絶反応を示した層が少なくありませんでした。