「オイスターバーで生牡蠣を15個ほど堪能した後、帰宅中に強烈な吐き気に襲われ、トイレから一歩も出られなくなった」——救急外来や消化器内科の医師に話を聞くと、冬場にはこのような訴えで駆け込む患者が後を絶ちません。多くの患者は「ノロウイルスに感染した」と思い込んでいますが、発症時間と症状を詳細に分析すると、全く別の病態が隠されていることがわかります。
牡蠣食べ過ぎによる下痢や食後の胃痛・吐き気の原因は、医学的に大きく分けて以下の3パターンに分類されます。
第1に、極めて短時間(食後30分〜数時間)で発生する「急性亜鉛中毒」です。牡蠣はあらゆる食品の中でトップクラスの亜鉛含有量を誇りますが、短時間に許容量を超える亜鉛が胃壁に接触すると、胃粘膜が強い刺激を受けて急性胃炎に似た炎症反応を起こします。結果として反射的な嘔吐や、腸管の異常蠕動による激しい水様便が引き起こされます。
第2に、翌日以降(24〜48時間後)にピークを迎える「病原性微生物による感染症」です。代表格であるノロウイルスは牡蠣の内臓(中腸腺)に蓄積されており、増殖したウイルスが小腸上皮細胞を破壊することで強烈な嘔吐と下痢をもたらします。
第3に、高タンパク・高グリコーゲンによる「消化器への過負荷」です。牡蠣は消化が良いイメージを持たれがちですが、冷えた生牡蠣を大量に摂取すると胃腸の温度が急低下し、消化酵素の働きが鈍化します。未消化のまま腸に送られたタンパク質が腸内細菌によって異常発酵を起こし、浸透圧性の下痢を誘発するのです。