日常会話でも頻繁に議論される「愛と恋の違い」ですが、学術的な研究においても明確な線引きがなされています。愛と恋の違いを語る心理学的理由を紐解く上で最も著名なのが、心理学者ロバート・スタンバーグが提唱した「愛の三角理論」です。
スタンバーグは、愛情関係を「親密性(精神的な結びつき)」「情熱(身体的・衝動的な引き寄せ)」「コミットメント(関係を維持する決意)」の3要素でモデル化しました。恋の初期段階では「情熱」が急上昇し、脳内ではドーパミンやフェニルエチルアミンといった神経伝達物質が大量に分泌されます。相手の欠点が目に入らなくなり、相手を独占したいと渇望する状態、これがいわゆる「恋」です。しかし、この化学反応による興奮状態は、神経科学的に見ても最長で2〜3年程度しか持続しないことが判明しています。
情熱の嵐が過ぎ去った後に残る「親密性」と、何があってもこの人を支えるという「コミットメント」の融合こそが、心理学の定義する「成熟した愛」です。作家のサン=テグジュペリ星の王子さまの名言として知られる「愛はお互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめることである」という一節は、まさにこの心理学的真理を詩的に言い当てています。向き合ってお互いを求め合うのが恋だとすれば、並んで同じ未来を歩む覚悟を持つことこそが愛なのです。