多くの常連客に惜しまれながら第二亀の湯が閉館に至った最大の要因は、「ボイラー設備の深刻な老朽化」と「莫大な改修費用の壁」でした。東京都公衆浴場業生活衛生同業組合の内部資料や関係者の証言によると、長年稼働してきた地下熱源設備や配管系統の損耗が限界値に達しており、安心・安全な湯水供給を維持するためには数千万円規模の抜本的な設備更新が避けられない状況にありました。
さらに、運営者の高齢化と深刻な後継者不在という構造的問題が追い打ちをかけました。昭和中期には東京都内に2,600軒以上存在した公衆浴場ですが、2026年時点では400軒を割り込む水準まで減少しています。公衆浴場の統制料金制度(物価統制令に基づく上限価格)のもとでは、燃料費の高騰や建築資材価格の上昇を即座に入浴料へ転嫁することは困難です。持続可能な収支モデルを描けないなかで、巨額投資を行って事業を継続することは、一民間事業者にとって過酷すぎる経営判断でした。
当時、脱衣場に掲示された静かな案内文を目にした住民は「いつかは直して戻ってきてくれると信じていたが、建屋の修繕計画が進まないまま解体へ向かう様子を見て、時代の区切りを痛感した」と振り返ります。単なる客足の減少ではなく、都市インフラとしての銭湯が直面する構造的疲弊こそが、第二亀の湯の幕引きとなった真相です。